ありがたいと感じることを書き出す
「ありがとう」という言葉の効果は、「口ぐせ理論」の定理3にも関連していることで すので、本章でじっくりお話ししていきましょう。
・とにかく毎日「ありがとう」と口に出して言う。
・「ありがたい」という思いをどんどんノートに綴り、「感謝日記」をつける。
・そうすれば、さらに大きな気づきがあり、人生はますますよい方向に変わっていく。
やがて私は佐藤先生からそのように言われ、大学ノートを購入しました。 「日記を書くなら、パソコン入力ではなく、ノートに手書きがいい。頭だけでなく手も 動かすし、一文字ずつ丁寧に、気持ちを込めて書くからこそ効果がある」 と言われたからです。
また、こんなことを教わりました。・謝すべき事柄に意識を向けることにより、ありがたいと感じる感度が上がる。
・そこから多くの気づきが得られ、視野が広がる。意識はどんどん研ぎ澄まされ、逆に
気持ちは穏やかになる。 それゆえ、できるだけ毎日、感謝日記をつけることを習慣にする。
・仕事が忙しくて、思うように時間がとれないときは、いつでも思いついたときにノートに走り書きをすればいい。
・きちんとした文章にする余裕がないときは、箇条書きでもいい。
感謝をリストアップして気づいたこと
なるほど、それならできそうだ、と私は大学ノートをいつも持ち歩くことにしました。 そして、日ごろ「ありがたい」と思った事柄を、次々とリストアップしていったのです。
「健康で元気でいられることに感謝。ありがとう」 「家族とともに楽しく暮らせることに感謝。ありがとう」 「快適な生活を送るために必要なお金を得られていることに感謝。ありがとう」 「両親、親戚、友人など、大切な人がつつがなく暮らしていることに感謝。ありがとう」 といった感じです。
実際にやってみるとわかることですが、この感謝日記は20項目くらいまでならスラス ラと書き出せます。ただ、そこから先がなかなか思いつきません。 私の場合でいうと、毎日たくさん「ありがとう」と口にするのは、慣れればできまし た。しかし、それより多くの「ありがとう」を書き出すのは、とても大変な作業だったのです。
「ありがとう」の言葉で、自分は人よりも感謝の心を持てるようになった、と思ってい たのですが、じつはまだまだ感謝が足りないと痛感しました。
感謝の材料はどこにでもある
感謝日記を書き出して数日後、私は思わず佐藤先生に次のように打ち明けました。
「一度に30項目くらいはスラスラと、日々感謝していることを挙げることができました。 次の日は、それが10項目に増えました。さらに翌日、なんとか別項目くらいは挙げよう と頑張ったのですが、以前書いたのと同じようなことばかりになってしまいました」
実際、私の感謝日記の内容は、同じ事柄を何度も取り上げ、ただ言葉を変えただけと いうものが多かったのです。たとえば、「健康に感謝しています。ありがとう」と書いたあと、同じようなことを 繰り返し書いています。
「今日も体の調子がいい、ありがとう」 「病気などしていない、ありがとう」 「元気だ、ありがとう」 「ご飯が美味しい、ありがとう」 「健康のために野菜をたくさん食べています、ありがとう」 「体重が1キロ減った、ありがとう」 「肩こりがひどかったけど、ラジオ体操をしたら治った、ありがとう」 「気力体力ともに充実している、ありがとう」
健康に対する感謝の言葉だけでも、このほかたくさん書き連ねていました。また、とにかく数を増やしたいという意識が先立ってしまったためか、ごく当たり前 のことだからと、これまではさして気にとめなかった日常の事柄を、あえて感謝の対象 としてカウントしていったのです。 電気、ガス、水道が完備されていること。 安心して水道水を利用できること。1時間いつでも、好きな時に好きなだけガスや電気を使えること。 コンビニやスーパーへ行けば、必要なものはたいてい揃っていて、手軽に買い物ができること。といった内容で、誰でもすぐに思いつくようなことばかりでした。
しかし、佐藤先生は私に、 「ごく当たり前の日常にあらためて感謝できるようになったのもとてもいいことだし、 それは感謝の対象は無限にある、と新たな気づきを得たということでもある」 「そうした気づきを得ることが、感謝日記の効用だ」 と言ってほめてくださったのです。
そんな言葉に少しホッとしましたが、続けて先生は、次のような少し厳しいこともお っしゃったのです。
「感謝日記を書き続けて、一度に100項目以上、楽々と挙げられるようになると、目 の前をふさいでいた壁を越えられるようになる。それはつまり、困難な出来事や嫌な人 物、どんなことであっても、ありがたいと思えるようになるってことだ。感謝の思いで 日々を送っていると、さらに感謝したくなる出来事が次々と起こるしね。ただ、単に感 謝の種を数多く挙げられるようになればいいというものではない。まずはあれこれ考え ないで行動に移すのがコッだ」「一つひとつの感謝に対して、自分はこのようにありがたいと思っている、という思い や感情について書いてみなさい。感謝体質になると、人との出会い、チャンス、情報な ど、望みどおりの素晴らしいものを次々と引き寄せられるようにもなるから」
私は目からウロコの落ちる思いで、先生の教えに耳を傾けていました。
そして、その日を境に、以前にも増して真剣に感謝日記に取り組んでいったのです。
感謝日記のデトックス効果
感謝日記を書く上で大切なのは、自分自身の心の中をじっくりと見つめて、深く掘り 下げ、そこにあるものを一つずつ言葉にしていくことです。
私の経験からいうと、漠然とした頭の中の思いを言語化していくことにより、それだ けでモヤモヤが整理され、気持ちが晴れわたるような爽快感まで味わえました。
書くことに夢中になり、ほかのことは何も考えられなくなる、というのは、それまで に味わったことのない感覚でした。雑念が消え、心がピュアになるというのか、ひたすら無心になっていくような感覚に 包まれていました。
「感謝日記には悪いものを体の外に押し流すデトックス効果のようなものがあるのかも れない」
そうひらめき、前日に書いたページを読み返してみました。するとまた新たな気づき が得られました。それは、もっと詳しく感謝日記を書いてみたい、という気持ちが自分の中で湧き起こ り始めていた瞬間でした。
1カ月後――。 ようやくノート一冊分が埋まりました。 私はそのノートを佐藤富雄先生に贈呈しました。私の人生を大きく変えるカギを握っ ているメンターにぜひとも読んでもらいたかったのです。ですので、その当時の感謝日記は、現在は私の手元にありません。どんなことを書い たのかも、はっきり覚えていません。
うろ覚えで恐縮ですが、思い出せる限り、ここに再現してみたいと思います。
妻への感謝
毎日美味しいご飯をつくってくれてありがとう。
布団を敷いてくれてあ りがとう。
そういうことはしてもらって当たり前だと思っていた自分に気 づき、なんて破慢だったのだろうと恥ずかく思っているよ。
心休まる家があり、家族がいてくれるのは本当にありがたいことだ。そ れだけでも十分幸せなことなのに、妻はいろいろと面倒を見てくれる。家 族みんなが心地よく暮らせるようにと心を配ってくれる。
こんなありがたいことはない。妻を大事にしたい。大好きだ。
子どもたちに感謝
毎日元気に遊んでくれてありがとう。
毎日学校へ行き、勉強も頑張って くれてありがとう。 お父さんとお母さんは、おまえたちを何よりの宝物だと思っているよ。こ れからもずっと大事にするからね。いくら大事にしても足りないぐらいだ。 大事にすればするほど、もっと大事にしたくなるんだ。
おまえたちを大事にすることが、お父さんとお母さんの喜びなんだ。生まれてきてくれて本当にありがとう。
みんなに感謝
私を生み育ててくれた両親に感謝しています。
私がまだ小さくて自分で は何もできなかった頃、お腹いっぱい食べさせてくれてありがとう。 暑くはないか、寒くはないかと、いつも気遣ってくれてありがとう。 おかげさまで、こんなに大きくなりました。
結婚をして自分の家庭を持 ち、二人の子どもにも恵まれて、命の輪をつないでいます。 両親、家族、そして友人たち、みんなに感謝しています。
それぞれにありがとうと言いたい。私の話を聞いてくれてありがとう。 困っているときは支えてくれてありがとう。嬉しいことがあったとき、一 緒に喜んでくれてありがとう。みんながいてくれるから、こんなにも幸せ でいられるのです。
これからも、どうぞ仲よくしてください。そばにいて ください。あたたかく見守ってください。私も、なにがあってもみんなのそばを離れません。
いつまでも一緒にい たいと思っています。それが私の幸せなんです。みんなの存在が私の幸せ をつくってくれているのです。
過去の出来事にも感謝
職場でいじめにあい、何年も仕事をさせてもらえないという状態が続いたけれど、そのおかげで、自分の人生このままでいいのかと、考えるようになりました。
切羽詰まった思いから行動を起こし、人生のメンターとなる人を見つけることができたのは本当にラッキーでした。
メンターに出会ってから、私の人生はどんどんよい方向に動いています。 これからどんな展開になるのか、どんないいことが待っているのか、考え るだけで胸が高鳴ります。
今このようになれたのも、過去に起きたすべて の出来事のおかげです。
単に悪いだけの出来事など、なに一つとしてなかったのだと思います。 それは自分にとって必要なことだから起きたのです。そこからいくつもの気づきを得ました。
気づかせてくれて、本当にあり がとう。過去に起きたすべての出来事に感謝しています。
そして現在、未来にも感謝します。すべてのことに、心からありがとうと言いたい。毎日なにかしたらいいことがおきます。日々成長し、変化していく自分を楽しんでいます。明日が待ち遠しい。生きているって、こんなにも素晴らしいことだったのですね。
今、私はとても幸せです。この用に書いている間、私は胸のあたりがじわーっと温かくなるのを感じていました。
その心地いい感覚はいまでもはっきりと体に残っています。感謝日記を書き続けていると、数ある感謝の中に、必ず自分にとって感謝を最大級で感じられるものと、幸せとはこれだったのかと感じさせるものが、いくつも見つかります。
私の場合は前述の通り、妻と二人の子供たち、両親、友人、そしてメンターの存在が、最大の感謝の対象であり、幸せの源泉でした。
現在の皆さんにとって、「幸せの源泉」となっているものはなんでしょうか。
毎日ひとつでいいので、みなさんがどんなことに強く感謝しているかを意識してみてください。そして、みなさんにとって「幸せの源泉」となっている大事なものが見つかるまで、感謝日記を書き続けてみてください。
深く感謝する、直感が磨かれる
運がいい人、なにをやっても成功してしまう人というのは、どこか共通する要素をもっているものだろうな、と私は薄々かんじていましたが、それが何なのか、今ならはっきりと、自分の言葉で説明できます。
運がいい人、成功する人に共通するもの、それは、
・自分にとっていい話が舞い込んでいることに気が付くこと
・ただ気づくだけではだめで、きちんと受けとめること
・そのチャンスをいかすこと
であり、この三つを高めたいとおもうのであれば、感謝日記が群を抜いて適しています。
私自身、感謝日記の効果により、脳と身体によい生化学反応をおこし、感謝体質になることができたのだと確信しています。
感謝日記を毎日の習慣にすると、3日、3週間、3か月という単位で、新しい境地が開かれていきます。
私の場合は、感謝日記を始めてから3か月がたった頃、FXの勉強を開始したのですが、その後はまさに、「ますます感謝したくなる」という展開となりました。そうした素晴らしい変化が、誰の身にも等しく起こります。私たち人間の脳と身体はそういう仕組みになっているからです。
みなさんが現在どんな境遇にいたとしても、やがてはいい兆候を素早くキャッチして、有益に活用できるようになります。今はその時がくるのを遠慮せずにイメージして、感謝日記を書いていってほしいと思います。みなさんにもいい変化が起こることを祈っています。